私は1男2女の3人兄弟の末っ子の長男と言う環境で育ちました。
小さい頃から父は家に居る事が少なく、母が一人二役で女手一つで育ててくれました。
中学生、高校と、やんちゃばかりしていた私は、数え切れない程の迷惑を親にかけました。
父は私が高校卒業と同時に肝臓がんにより他界しました。
ある日、母の老いた姿がふと目に浮かびました。
将来、母親の介護ができたら親孝行が少しでも出来ると思い、介護の仕事を選びました。
しかし、母親も4年前に脳出血を発症し帰らぬ人になりました。
父にも母にも育ててくれた恩返しも出来ないままにお別れをすることになってしまいました。
諸行無常という言葉を思い知らされました。
人間は生まれた瞬間から死と直面し、その流れをとどめることはできないのだということを学びました。
母親の死からしばらくの間は、俺はいったい何をしているんだろう。今までやってきた事は間違っていなかったのか。親孝行は出来ていないじゃないか。俺には何ができる?と自分に問いただしていました。
母が他界してから毎日、毎日、仏壇に手を合わせている内に、ふと思いました。
お客様に第2の我が家を提供しよう。笑いを作り、悲しみを共感し、怒りを聴き、苦しみを取り除き、お客様と人生の喜怒哀楽を共にしたい。と思うようになりました。
この仕事を始めた頃は、お客様に自分から話しかける事もできずに、距離が空いていました。
どうしたら、楽しませる事が出来るだろう?どうしたら利用者様にうち溶けていけるだろう?とずっと考えていました。
そして、人と人のつながりを作って行くためには、その人の性格を知り、その人の歩んできた道や環境を知ることだ。という答えが出ました。
この仕事に就いて8年になります。
無資格未経験の状態で働き始めましたが、今では介護福祉士の資格も取得し、介護のプロとして誇りを持って働いています。
まだまだ未熟な部分も多々ありますし、一生かかっても答えを出せないような問いもありますが、お客様に「ここにいて良かったな、この人と知りあえてよかったな」と思ってもらえるような人情味あふれるような人を目指しています。
仕事が終わって帰るときに、お客様が「行ってらっしゃい、次いつ来るの?」
「明日来るの?」「毎日来なさい」などと、冗談を言いながら玄関まで見送ってくれます。
出勤時には「おかえりなさい、待ってたよ」と出迎えてくれます。
どんなに、気分が晴れなくても、沈んでいても、その言葉一つで元気になれます。
たとえ血のつながった家族じゃなくても精一杯、最高の疑似家族として、最高の環境を提供し、お客様に向き合っていきたいです。
介護の「介」と言う字は一人では倒れそうになっている人をもう一人の人が支えることにより倒れない家になっているのではないかと思っております。
人と人との繋がり、絆を胸に入れて生きます。
人は一人で生きているんじゃない、必ず誰かの助けを得て生きているんだと言うことを常に胸に刻みながら人生の勉強に励んでいきます。