私は中学3年の時、肺炎で入院したことがあります。
その時、同じ病室に一人のおじいさんが居ました。
そのおじいさんはベットで眠っていることが多く、素人目にも、決した良い状態ではありませんでした。
しかし、奥様であるおばあさんの良心的な看病の甲斐もあって、しだいに元気が出てきました。
ところが、看病疲れからか、今度はおばあさんの具合が悪くなり、おじいさんの看病が出来なくなってしまったのです。
私は、何かお手伝いできる事はないかと色々探してみたのですが、結局、配膳をおじいさんの前に置いてあげることくらいしか出来ませんでした。
資格もないので、ご飯を食べさせてあげることも出来ない自分にとても歯がゆさを感じたものです。
面会に来るおばあさんと、おじいさんを囲んで楽しく会話する日もありましたが、数日後おじいさんは天国に旅立たれました。
寂しさと、もっともっと何かしてやりたかったというくやしさで涙が止まりませんでした。
そんな私に「あなたの笑顔と優しさのおかげで、短かったけど楽しい時間を持てました、ありがとう。」と、おばあさんが私の手を握り、声をかけてくれたのです。
その時のおばあさんの心と手の温もりに心を動かされ、この出会いが介護の道に進むきっかけとなりました。
専門学校を卒業し、いよいよ某施設で働くことになりました。
初めは利用者様とうまく接することが出来ず、とまどう場面が多く、悩む日々が続きました。
しかし、利用者様から学ばせて頂くという気持ちに切り替え、自分のペースで介護するのではなく、利用者様のその日の気持ち、考え方に合わせて、寄り添いながら、常に同じ目線で理解していくように心がけました。
介護職に就き22年、色々な方と出会い、沢山のありがとうを頂き、時にはこちらが勇気づけられ、毎日が発見の連続でした。
これからも利用者様にとって、普通の生活が送られ、「今日は良かった」、「明日も生きよう」と思って頂けるように、かたわらで支えていけたらと思います。